「静かに!私語は慎め」 ほら、怒られた。 辺りには、まだクスクスと笑い声が残る。 それでも本人は全く気にしていない。 私はしばらくの間、恥ずかしさで顔を上げられなかった。 「後藤先生、お願いします」 「1年休みを貰っていましたが怪我も治り、またこの学校に戻ってきました。 後藤 篤志です。教科は体育。部活は陸上部を受け持ちます。よろしく」 想像した通りの低い声。 「その声に名前を呼ばれたい」そう思った。 この時から、あなたに恋をしていたのかもしれない。 初めての恋―――