「理恵、どうした?固まってるけど」

声をかけてくる亜耶の声も聞こえない。



幻覚?

「亜耶、ほっぺた抓って」

「はい?とうとうMに目覚めた?」

「ち、違う!夢見てるかもしれないから」

「また訳分からない事言う子だわ~。まっいいか。え~い!」


バッチ~ン!!


音と共に私のおでこに衝撃が。思い切りデコピンしやがって~ほっぺたを抓ってくれればいいのに…

「痛いってば~」

涙目で睨むが効き目はなかったようだ。



でも…痛いって事は……

まさか……本当にまた会えた?

現実だと分かると、緊張感が私を支配する。


「……あ …亜耶… あの人が… ベンチにいた人…かも…」

壇上を震える指で指した。



「ウソー!?マジで?」



亜耶の大声が体育館中に響いた。



「しーッッッ!!亜耶マジで声デカイ!みんなから注目されてんじゃん!恥ずかしい」

私が小声で怒ると「ごめ~ん」と顔の前で手の平を合わせ、ウィンクをする亜耶。

そんな姿を見ると女の私でも、何でも許せてしまう位かわいい。



結局、亜耶には弱いんだよなぁ…私。