安楽死


病院までの道程に、私は敢えてあの踏切りを選んだ。あの瞬間を思い出すため近付きたくもなかったが、どうしても古物屋に行っておきたかったからだ。


踏切りまで続く歩道を歩いていると、愛美が前を歩いている姿が鮮明に思い出される。

あの時、私がもっと強く愛美を止めていれば、こんな事にならなかったのに・・・

後悔の念が私の頭をグルグルと回る――


異様な雰囲気に我に返ると、既に踏切りの目前に来ていた。愛美が倒れていた辺りを、無意識に見てしまう。

私は首を左右に振って思いを振り払うと、道路を小走りで渡る。そして、教えられた古物屋の前に立って耳を澄ませた。


しかし、いくら集中してみても、変な音など全く聞こえてはこない・・・

仕方なく店内に目をやる。そもそも、この店にある商品はオフィス用の椅子や机ばかりで、音が出る様な物は見当たらない。

音源は古物屋ではないのかも?
実際に、音などどこからでも聞こえてくるし・・・


「何か用かい?」

店の中から年配の男性が、のっそりと出て来た。店頭でウロウロしている私が気になったのだろう。

「あ、すいません」

私は頭を下げると左右を確認し、逃げる様に走って踏切りを渡る。そして、そのままの勢いで三春総合病院に向かった。