安楽死


「そういえば、あの踏切りの前にある古物屋をよく知っているんだけど、変な事を言ってたよ。

最近、時々変な音がするとか何とか・・・
まあ事故と関係があるとは思えないけどね」


変な音・・・一体何だろう?


「あ、あと、踏切りに幽霊が出るって――」

老婆は一瞬「幽霊」と聞いて動きを止めた様に見えたが、直ぐに全身を使って大笑いをした。

「私は今まで、そんな話聞いた事ないねえ。ただの作り話じゃないのかい?」

「そうですか・・・ありがとうございました」


事故も悪霊も、両方とも違うの?
答えが見付からず、私はフウと大きくため息を吐いた。


「お兄さんに、たまには寄る様に言っておいてちょうだい」

私は深々と頭を下げると、狭い古本屋を後にした。手懸かりが何もない。それとも、本当に何もないのか。


顔を上げて駅の時計を見ると、まだ正午を少し回った頃だった。意識が戻っていない事は分かっていたが、私は帰宅する前に愛美の様子を見に行く事にした。