安楽死


15分余り歩き、ようやく駅に辿り着いた。駅前商店街を目にした私は、ふと兄の言葉を思い出した。

「古本屋・・・」


駅前のロータリーでグルリと周囲を見回すと、駅の東側に古びた本屋らしき店舗がある事に気付いた。

通学路であるにもかかわらず、今まで全く知らなかった。私は一縷の望みを抱き、その本屋に向かって歩を進めた。


店舗に近付くに従い、店頭に並べられた本がハッキリと見えてきた。

108円・・・値段がかなり安い。
間違いなく古本屋だ。


本が山積みにされ、身体を横にするとどうにか通れる程の狭い入口。無理矢理中に入ると、店内は3畳程のスペースで、天井まである本棚にはギッシリと古本が詰まっていた。

「いらっしゃい」

突然しゃがれた声が聞こえ、私は驚いて声のする方を向いた。そこには低いカウンターがあり、その向こう側に小柄な老婆の姿があった。


「あ、あの・・・少しお聞きしたい事があるんですが」

老婆は私の顔をジッと見詰めたあと、突然カッと目を見開いて言った。

「貴女は、もしかして・・・里川君の妹かい?」

一瞬驚いたが、それが安堵に変わる。

「はい」


「そうかい、そうかい。
おうおう、よく似てるねえ・・・
あの子は、毎日の様に来てたからよく覚えているよ」

老婆はシワだらけの顔を崩して、優しく笑った。