「千里ちゃんが、ブレザーを引っ張ってくれたお陰で助かったんだね。警察の人が、そう言ってたよ・・・ありがとう」
愛美の両親に頭を下げられたが、私の思いは複雑だった。胸を張って助けたとは言えない。
でも・・・
愛美は本当に自殺をしようとしたのだろうか?
直前まで上機嫌だったのに?
もし自殺まで考える理由があったとするならば、一番近い存在の私には何か思い当たる事があるハズだ。
しかし・・・
私には電車に飛び込んでまで死のうとする理由が、全く思い付かない。いやそもそも、踏切り内に入り込む前の愛美は、雑誌を買いに行こうとしていたのだ。
本当に、愛美は自殺しようとしたのだろうか?
あの時の愛美は、まるで何かに取り憑かれた様に遮断機をくぐって行った。
そう、何かに導かれる様に──
私は病院できちんと親指を治療してもらい、何も出来ない無力さに打ちひしがれながら家路に着いた。
包帯を巻いた親指の痛みが、今更の様に頭の先まで響く・・・



