安楽死


スローモーションの様だった。
ゆっくりと動く景色の中で、愛美と電車が重なる――


私の指先が、愛美のブレザーの襟元に引っ掛かった。力を込める。
離さない。絶対に離さない!!


パァ――ン!!という電車の警笛が、鼓膜を突き破る様に鳴り響く。
全身が震える。
それでも、この手は離せない!!

右手の親指にギュッと力を込め、強く掴み直した。そして、全身全霊で愛美の身体を思い切り引き寄せる。

吹き抜ける烈風と鈍い衝撃音。
激しい振動が右手に伝わる。
それでも、力の限り握り締める!!

電車の急ブレーキで、車輪とレールが擦り切れる。甲高い音が周囲に響き渡り、焼け焦げた臭いが一気に広がる。

その瞬間――

右手に激痛が走り親指の爪が吹き飛ぶ。血しぶきが舞い、重さが消えた・・・