人気の無くなった駅に、周囲を気にしながら入って来る人物がいた。

駅を行き交う人々を注意深く見てきた私には、その姿がかなり奇妙に映った。

サングラスをしているので、そんなに気にする必要はなかったが、可能な限りそちらに向かない様にして監視する。


その人物は私に背を向けたまま駅の構内に入ってきた後、時刻表を見るフリをしながらコンロッカーに近付いて行った。

そして、コインロッカーの前で更に周囲に注意を払うと、あの壊れたロッカーに手を入れる──


あ!!

私は直ぐにでも飛び出しい衝動を抑え、更に様子をうかがう。決定的な証拠が必要だ。ここで焦っては、振り出しに戻ってしまう。

私はその人物が、その場を離れるまでじっと我慢してベンチに座っていた。

その人物は暫くロッカーの中に手を入れて何かをしていたが、ロッカーから離れ、改札ではなく駅の外へと歩き始めた。