ちょうど、駅の中からは死角になっている壁の向こう側。誰もいないものと決め付けていた為、何も考えず思い切り覗いてしまった。
「あ、誰かいる」
あれ?田中だ・・・
こんな所で、一体何をしているのだろう?
私は何気なく田中に声を掛けた。
「田中君、こんな所で何してんの?」
声を掛けられた田中はこちらを見て、返事もせず少し後退りした。
あ、そうか、私は変装していたんだった。
私はサングラスを外し、田中に声を掛け直した。
「私よ、私・・・」
田中はやっと私だと分かったらしく、安心した様子で近寄って来た。
「さ、里川か・・・脅かすなよ、変な人かと思ったよ」
「ごめん、ごめん。ところで、田中君はこんな所で何をしてるの?」
「あ・・・いや、ちょっと用事があってね」
田中は少し困った様に伏し目がちに、言葉を選びながら曖昧に答えた。一体、何に動揺しているのだろう?
それにしても、田中が休日にゲームもせず駅に立ってるなんて何か不思議な感じだ。



