訊くと、岩谷さんは顔を赤らめて目をそらした。



「悪かったな。」


「いやいやいやいや、誰も悪いとは言ってない。」


「央の目が言ってるんだ。」


「子どもみたいなこと言ってんじゃねーよ。」



央はニヤッとしてテーブルの下から岩谷さんの足を蹴った。



「男が甘党で何が悪い!」


「ちょっ、央、急に立ち上がらないでよ。」



テーブルが盛大に揺れた。



コーヒーがこぼれたらどうしてくれるんだこの野郎。



「いきなり立ち上がって力説するほどのことなのぉ?」



美喜さんが自分のグラスを持って避難しながら央をにらんだ。



「シャクシャインはこうやって立ち上がったんだ!」


「シャクシャインって誰よ?」


「アイヌの英雄。」



何の関係があんのよ、とまた美喜さんは呆れて顔をしかめた。



「ハイハイ、ケーキはおいしいもんねハイハイ。」


「むむっ!」



いかにもヒーローがとっていそうなポーズをしていた央は口をとがらせて美喜さんをみた。



「もういいよ、央。」



あたしは何か言おうとしていた央を遮った。



「食べよ食べよ。」


「そうだね、馬鹿な央はほっといてね。」



あたしと美喜さんは身体を寄せ合ってフォークを口に運んだ。



「ほら、お前も来いよ。」



岩谷さんに手招かれ、央はなんとか隙間に座った。



「ひどいよ女は。」


「馬鹿だよ、男は。」


「男って、俺も入ってるのか?」


「何、あんたオカマ?
いやだわ、あたし騙されてる。」



おい、と岩谷さんが美喜さんを睨む。