パーンとクラッカーが音高く響いた。



「おめでと~う!」



玄関先でパチパチと拍手をするあたしと央を目をまん丸くして見つめる美喜さん。



「今日は二人の引っ越し祝いにやってきました。」



ニンマリ笑う央を気味悪そうに見やりながら、美喜さんは岩谷さんを呼んだ。



「正毅!?」


「何だよ。」



クスクス笑いながら現れた岩谷さんを見て、美喜さんは瞬時に悟った。



「正毅、あんたが呼んだね!?」


「当たり。」


「何勝手なことしてんのよ。」



まだ部屋片付いてないのに、と美喜さんは岩谷さんをにらむ。



「まあ、ちょっとごちゃごちゃはしてるけど、別に不自由はないだろ。」


「まったく…。」


「まあいいや、入んな。」



言いながら美喜さんはドアを大きく開け放した。



「わーい。」



いそいそと中に入る。



「俺達、二人の愛の巣に乗り込もうとしてんだぜ。」


「うひひ、何か変な感じ。」


「あんた達の方がよっぽど変な感じよ。」



呆れた美喜さんはため息をついてリビングに入った。



続いてあたし達も。



岩谷さんは既にソファーでくつろいでいた。



「美喜さん、これ、ケーキ。」


「あぁ、そんなんいいのに。」



あたし、食べる用意してくる。と美喜さんは立ち上がった。 



「でも、キッチンって言っても、すぐ近いんだよねぇ。」



確かに、ソファーから10歩でシンクがある。



「でも俺達の経済力ではこの間取りが精一杯なんだよな。」


「ね。
別に二人暮らしだからいいんだけどさ。」



お待たせ、と美喜さんが戻ってきた。



それぞれのグラスに入っているのは、やっぱりコーヒー。