「マンガ、読んだよ。
続き持ってきてくれたぁ?」


「うん、昨日メール送ってくれたから。
ちゃんと持ってきたよ。」



こんな会話を聞きながら、あたしは教室に向かった。



「今日、一時間目から英語だよ、ウザーイ。」


「じゃあなんで愛は文系コースを取ったの?」



この学校では、2年から英語を比較的多く勉強する文系コースと商業関係を専攻する理系コースにわかれる。



「だって、うち、理数もキライだもん。」


「へぇ。」


「ね、由宇希、あたしちょっと後で職員室行きたいから、付き合って?」



咲子があたしを覗き込むように言った。



「わかった。
じゃあ、カバン置いて行こっか。」


「あ、じゃあ、うちも行くよ。」


「いいよ、愛は。
由宇希だけでいいよ。」



一見、遠慮しているように見えるけど、実は…。










「ああ、やっとまけたぁ。」



咲子が教室を出た途端豹変する。



出た、裏咲子。



「由宇希も大変だね。」


「え?」


「愛に懐かれちゃって。」


「あ~…。」



2年になってすぐ、たまたま席が隣になった愛に話しかけたところ、こうなった。



「愛、一人だったからねぇ。」


「ねぇ。」



優しい咲子をもイラつかせる。



鈍感なところが少し苦手だ。