「さっちゃん、もう教室についてるのかな?」


「どうかな。
さっちゃん、自転車だよね?」


「うん。
今日、早く来るって言ってたから。」



愛は言ってあたしたちの教室を見上げた。



「うち、早くマンガの続き読みたいんだよね。」



焦がれるような表情の理由はそれか!と内心盛大に突っ込んだ。



愛は最近恋愛マンガにはまっている。



王子様は現れないかな、といつも言っている。



冗談で言っているのかと思ったら、本気だったらしい。



「ねぇ、由宇希も読んでみたら?」


「あたしはいいや。
今、ブームじゃないんだよね。」



正確には、今、そんな状態じゃない。



今、そんな甘々のマンガなんか読んだら自爆する。



「あ~彼氏ほし~。」



止めてくれ、人目が、人目がッ!



たまに大声をあげるこの人が苦手だったりする。



ちなみに、愛とは今年に知り合った。



「おはよー。」



聞き覚えのある声に、あたしは振り向いた。



「咲子。」



綺麗な黒髪ストレート。



この髪型で最初は警戒したけど、今は大好きだ。



「さっちゃん、おはよう。」



愛がバタバタと駆けていく。



咲子はそれを笑って受け止めた。