「聞いといてよ?」


「うん、あたしも乗り気になったし。
前向きに検討してみます。」


「えっ、ちょっ、それ断り文句じゃないの?」


「あ、気付いた?」



焦った央をみて、あたしは笑った。



「まったく、由宇希は人が悪いよ。」


「そんなことないよ。」



ソフトを食べ終わったあたしは紙を丸めてごみ箱に投げた。



「ナイスシュー。」



央がパチパチと拍手をする。



そして自分もカップを握りつぶし、寸分の狂いもなくキレイにごみ箱に入れた。



「央のが上手いじゃん。」


「知らなかった?
俺、元バスケ部。」


「嘘ぉ!?」



知らなかった。



「それで綺麗な筋肉なんだねぇ。」



ペタペタとあたしに身体を触られ、央は照れて身体を捩った。



「やめろよ、お前には海斗がいるんだろ?」


「だって今は物理的にいないんだもん。」


「物理的ときたか…。」



頭を掻き掻き、央はあたしの手を引いた。



「帰るか。」


「うん。
あんがとね、付き合ってくれて。」


「いいえ〜。
また会おうぜ。」



あたしは笑って頷いた。



「今度は央のアパートに集まろうよ。」


「え゛っ、集まるって美喜さんもか?」


「岩谷さんだけ呼んで美喜さん呼ばないわけにはいかないでしょう。」



マジかよ、と央は頭を抱えた。



「美喜さん呼ぶと、部屋を漁られるから怖いんだよ。」


「まだ呼んでないじゃん。」


「ああ、まだだよ、怖いもん。
だから由宇希しか入れてねーんだよ。」



あああああ〜、と唸る央を今度はあたしが引っ張った。



「はいはい。」



クスクスと笑うあたしを睨み、央は言った。



「頼むから、突然訪問とか止めてくれよ。
俺、マジで入れないかんな。」


「はいはい。」



なおもクスクス笑い続けるあたしに何度も念押しし、央は自分のアパートに帰っていった。