私の中を満たすのは、大きな絶望。

天狗が吹いているんじゃないと、思っていたのに。


「ふぇ…」

泣き出しそうになって立ち止まった瞬間、ぐいっと腕を引かれた。

「!?」

後ろを振り返って息が止まる。

真っ赤な髪が目の前にあった。


「い…っ、嫌ーー!!ごめんなさい、殺さないでぇ!」

「は!?」

「もう来ないから、命だけは助けてぇ!」

大声で泣きわめいていると、頭上から天狗の声が降ってきた。

「落ち着け。誰も殺そうなんて思ってない」

「へ…?」


恐る恐る上を見上げてみると、赤い瞳と目が合って。
今度は別の意味で動けなくなった。

だって…彼が、あまりにも整った顔立ちをしていたから。