やっぱりあなたが好きでしかたない。
体の細部まで染み渡るような甘い音色を、教えてくれたのはあなただけなの。


聞き終わった後、散らばる紅葉の赤の中にある一層鮮やかな赤がこちらへ向けられた。

震える緊張した声で一言、好きだと言った。

「撫子。撫子…っ」

私を求めるその声が、私を心底安心させる。
私だけが見ることができるその涙が、私の涙も誘う。

あなたを独り占めしたい気持ちは変わらない。
けれどそれだけじゃあいけないこともあるだろう。


好きだから、本当に好きだからもっとたくさんの人にあなたを知って欲しい。
天狗などでは無いと、天狗だとしてもそれはとても素敵な天狗だと伝えたい。

ひらり舞う音は、私の心に着地する。
そして、村の皆の中にも。