あの山に、天狗が?


「嘘、そんなわけないじゃない」

思わず否定してしまってから、むきになっている自分に気付く。
友達は大きな目を白黒させて、

「どうしたの?いつもそんなに怒ること無いのに」


本当に、どうしちゃったんだろう。

でもあんな綺麗な音を出す人が天狗だなんて、言わなくたっていいのに。
天狗だとしてもそれは皆が思うような人じゃない。

そう、思うの。




その日の帰り道も聞こえた笛の音。

その一件もあって、私はどうしてもその正体を確かめてみたくなった。
天狗だったなら逃げ帰ろうと、心に決めて。