その滑らかな手にそっと自分の手を添えて、私は口を開く。

彼を傷つけないよう、言葉を選んで。


「私…。あなたの音が聞きたい」

彼の瞳が惑うように揺れる。
なぜ今それを。
そう言いたそうだった。

「だめ?」

「どうして」

彼がぽつりとつぶやく。

音が落ちた場所には、あたたかな色が染み込む。


「音なら、いつも聴いているんだろう」

確かに私は彼の音を聴いている。
毎日のように、村に流れる音色を。

でも、それは…。


「私は」

違うんだよ。

「夜月が演奏している姿が見たい」

音が聴きたいだとか、それ以前に。

私は、私だけに向けられた音を聴きたい。
もしこの頼みをきいてくれたなら、こんなに素敵なことは無い。