「俺は、異人との間に生まれた者だ」
「異人…」
彼の言葉を口の中でゆっくりと転がす。
私は見たことが無いけれど、異人という者は皆夜月のように綺麗な人なんだろうか。
「その血を引いているから、こんな髪と目の色を持つんだ」
自分の髪をいじりながらそうつぶやき、彼はまた黙ってしまう。
「いいなぁ…」
気付けばそう言っていて。
顔を上げた彼の表情には、さっきよりも増幅された寂しさが浮かんでいた。
私は、何か悪いことを言っただろうか。
「私も、夜月みたいに異人との間に生まれたかったな」
「撫子」
言い終わるか終わらないかのうちに、彼が私の言葉を止める。
その声音に含まれた怒りに、全てを理解した。
…私、なんてひどいことを―― 。