それにしても、天狗にじゃじゃ馬と言われる私ってどうなんだ。
恥ずかしくなってわたわたしていると、彼が途端に寂しそうな目をして見せた。

「…来て、くれたんだな」

「夜月…?」

うつむいた彼は、今にも悲しみの中に溶けてしまいそうな危うさを持っていた。
何とかしないと。
そう思う一心で口にしたのは、

「夜月は本当に天狗なの?」

我ながら、相手の傷口を抉るだけのひどい質問だった。
そんな私の問いかけにも彼は怒鳴ることなく応えてくれる。
声に、揺らめく苦しさを残したままで。


「皆は俺のことを天狗と呼んでいるのか」

「うん」

「そうか」

居心地の悪い沈黙があって、夜月が顔を上げる。

「俺は、天狗では無いよ」

ずっと気になっていたことがするりと解けた。
でもそれじゃあ、この赤い髪は何?