「金剛戦士Ⅱ」西方浄土

月面基地を利用してのテスト飛行は宇宙戦闘機に、僅かな技術的な改良点が見つかった他には、大きな問題は発生せず、順調に終了し、おおむね計画通りの性能が発揮されたことや、今後の開発製造スケジュールの概要などの説明を行なった。

技術的な改良点も、僅かなもので、地球帰還後二週間のうちに、改良もすでに終了していると語った。

李は説明を聞き終えると、パイロットたちに労いの言葉を掛け、初めて開発された宇宙戦闘機のパイロットとして、苦しんだことや、不安は無かったのかを訊ねた。

スティーブとケイトは、テストパイロットとして選ばれた事自体が光栄であり、誇りに思い、やりがいを感じて、不安や苦しみは、ほとんど感じなかったと伝えた。

報告は約一時間で終了して、それぞれが李と握手をして会議場を後にした。

李が時計を見ると時間は九時四十分になっていた。

十時からは、二日前に行なわれた地球防衛計画策定会議で決定された三十項目の採決を取る為の安全保障会議が開催される。

李は会議場に向かって歩いて行く途中で通路の窓から外を眺めた。

窓の外には五月の明るい陽光が降りそそぎ、木立が爽やかな風に揺らめいている。

遠くでは連合本部ビルを見に来た観光客の家族であろうか、親子の四人連れが、こちらを指差しながら、何かを話している。

李は、しばしの間たたずみ、窓から外を眺めている・・・

眺めているうちに長女のジョアンのことを思い出し、無機物生命体との激闘が開始される何日前だったのかは忘れたのだが、ジョアンに電話をした時のことを思い出していた。

大阪に住んでいるジョアンに電話をした時には、地球に近づきつつあった無機物生命体には、まだ誰も気がつかずに、小惑星群が近づいて来ているものだとばかり思っていた。