「金剛戦士Ⅱ」西方浄土

しかし、さすがに今頃では廃れて、ショーとしてのみは続いているのかも知れないが、本格的には行なわれているのか、どうかは分からなかった。

桂浜の北にある浦戸城跡の展望台に立つと、南には黒潮洗う土佐湾が見え、北には浦戸湾が眺められる。

北に見える浦戸湾は、波穏やかで美しかった。海岸沿いを黒潮が洗い、豪壮で男性的な景観の多い高知県で、入り組んだ入り江と島が浮かぶ、浦戸湾は、唯一ともいってよいくらい、瀬戸内的な穏やかで優しく静かな風景である。

理絵の念願であった鯨料理を食べにゆき、ホテルに戻り、理絵と勇太が部屋のベッドに寝転び、テレビを見ていると、小笠原諸島東方の無機物生命体の全滅した西太平洋で、まもなくすると海洋調査が始まるので、その事についての特集番組をしていた。

しばらく見ていた勇太が

「無機物生命体の残骸とか見つかるかなぁ・・・あの辺りの海域は、相当深いしなぁ・・・」
と独り言を言いながら見ている。

勇太は、この八十八ヶ所巡りの旅に参加する前までは、地球の大気圏外の宇宙で新しく開発された宇宙戦闘機のテスト飛行をしていたのだった。

宇宙戦闘機は大きな不具合も無く、順調にテスト飛行は進み、小さな改良を施した後、次回の飛行からは実戦的な訓練飛行に入る予定である。

宇宙戦闘機は試験飛行用に世界中で五機製造されていて、そのうちの一機が日本で製造され、勇太が乗っている。