夜は六人揃って鰹のたたき料理を食べにゆき、お婆ちゃんたち三人、勇太と理絵、由紀がそれぞれの部屋に戻ったのは、九時前であった。

由紀がシャワーを浴びて出てきて、寝間着をまとっていると携帯電話が鳴り出した。

何処からの着信なのかと思って見てみると、地球外となっている。

由紀は、直からだと咄嗟に思いつき、すぐに電話を取ると

「もしもし直です、元気ですか」

と声が聞こえた。由紀は

「元気よ。直、今、何処からかけているの」
と訊くと、直は

「今、月面基地からしています。今日、火星から到着しました。理絵や勇太も元気ですか。お母さんたちは、お四国巡りに行くって言っていたけど、今、どの辺りなの」
と返事をした。由紀は

「え~とねぇ。高知市内のホテルよ。あなたがたも元気なの」
と訊きつつ

「ちょっと待ってね。今から理絵の部屋へ行くから」

と急いで上着を羽織り、携帯電話を持って、理絵の部屋へ走った。

理絵の部屋のドアをノックすると寝間着姿の勇太がドアを開けてくれて、由紀を部屋の中へ招き入れてくれた。

理絵は、ちょうどシャワーを浴びて出てきたところで、髪を乾かそうとドライヤーを右手に持ち、由紀の姿を見て

「どうしたの」
と訊くと、由紀が

「直からよ。直から電話が掛かってきているの」

と言って、理絵に携帯電話を差し出した。

理絵は、持っていたドライヤーを机の上に置き、携帯電話を受け取り話し始めた。
傍で見ていた勇太が

「お義母さん、慌てていますねぇ。靴を履いていないですよ」

と言うので、由紀が足元を見るとスリッパのままで来ていた。