李は数時間の仮眠を取り、午前六時には、すでに連合本部の通信本部に来ている。

各国への伝達文書は、夜半過ぎには作成を完了して、即時、各国政府に伝えられた。

物体は、その後もカメラ衛星の監視下にあり、逐次、状況が報告され、物体の状況は把握されている。

李が椅子に腰掛けて、腕組みをしてスクリーンを見ていると、物体の波打ち際に、何やら船が横倒しになったようなものが見え出した。

李は立ち上がり、その映像に向かって指を指して

「あれは何だ。船じゃないか。もう一隻船が見え出したぞ」
と声を上げた。

スクリーンには、最初に映っていた日本の海洋調査船とは別の船が、物体の波打ち際で見え隠れしているのが映っている。

その映像を同時に見ていた科学者が瞬時に分析を始めた。

科学者の手元には、これまでに行方不明になった遭難船のリストと船体などの情報が集められており、該当する船があるのかを調べてゆく。

物体の波打ち際に見えた二隻目の船は、その特徴から、東シナ海で行方不明になった大型コンテナ船のようだが、波に洗われていて、船体が、はっきりとは見えず、特定はできない。

しかし、なぜ先ほどまで見えていなかった船が見え始めたのか。

科学者が映像を追いながら、分析したところ、どうやら物体が、ゆっくりと回転を始めたようである。海流の影響かも知れないが、どうして回転を始めたのかは、分からなかった。

その後も物体の回転は、ゆっくりと続き、時間の経過と共に大型コンテナ船と思われる船が、徐々に姿を現してくる。