「金剛戦士Ⅱ」西方浄土

咄嗟に勇太が手を差しのべて、抱きかかえるようにして転ぶのを防ぐと、彼女は勇太に礼を言い、金の納め札を手渡した。

納め札は、各札所に参拝した時に納めるのだが、巡礼を重ねると納め札の色が変わってくる。巡礼の最初から四度目までは白色、五度目から七度目までは緑色、八度目から二十四度目までは赤色、二十五度目から四十九度目までは銀色、五十度目から九十九度目までは金色である。そして百度目を越えると錦の納め札となる。

納め札は、参拝した時に納めるだけではなく、お接待を受けたり、何かで世話になったりした時にも、相手の人に、お礼として御守り代わりに渡すのだ。

ということは、今、勇太が受け取った金の納め札を持っていた女性は、勇太に、お礼として渡したのだが、彼女は五十回以上お四国巡りをしているのである。

一年に二度お参りしても二十五年掛かるわけであり、勇太からすれば気の遠くなるような数字であった。

勇太が
「金の納め札を持っている人に会えるとは思ってもいませんでした。どうも。ありがとうございます」
といただいた礼を言うと

「こちらこそ、転びかけたところを助けてもらって、ありがとうございます。錦の納め札を持っている人は、数少ないでしょうけど、金の納め札を持っている人は稀に居ますよ」
と彼女は言った。

しかし、数少ないのは間違いないであろう。

話をしていると、彼女は最初、病気に苦しみ、病気平癒を請願して始めたのだそうだ。