「金剛戦士Ⅱ」西方浄土

四十五番の石段を上りながら、理絵が

「やっと、半分が過ぎたね」
と勇太に話かけている。

先ほどの四十四番で、ちょうど半分を打ち終わったので、四十五番からが折り返しての、残り半分の道程となる。

「本当だね。やっと半分が達成できたという感じだね。途中で観光をしながら来ているといっても、ここまで来るのに何日かかったのかなぁ・・・」

と勇太は、これまでに費やした日数を、指を折りながら勘定している。

石段を上り、本堂に着くと、本道の背後には巨大な岩壁がそそり立っていて、その景観に驚かされた。

今にも本堂に、のしかかってきそうな感じであり、周囲を見渡すと岩峰が、あちらこちらに、にょきにょきと立っていて、墨絵の山水画のような世界である。

その岩壁に切り込むようにして大師堂が建っている。大師堂の脇には梯子が掛かっていて岩壁に口を開けている岩窟まで上れるようになっている。

勇太は理絵を上ってみようと誘い、勇太が梯子を上っていく後から、理絵は怖がりながらも、ついて上っていく。

上りきって、眼前の風景を見ると、大師堂や本堂の周囲に繁っている杉木立の大木の向こうに岩峰が見え、仙人でも住んでいそうな雰囲気に見える。

お婆ちゃんたちと由紀は、怖いので梯子を上るのを諦めて、二人を残して、来た道を、先に歩き下り駐車場へと戻ってゆく。

勇太と理絵は、岩窟から下りると、お婆ちゃんたちに追いつこうと、石段を下っていた。
すると理絵と勇太の目の前で、一人で上って来ていた年配の婦人が石段につまずき、よろめいて転びかけた。