「金剛戦士Ⅱ」西方浄土

しかし、紀恵お婆ちゃんは

「一人で住んでいると寂しくなるの。だから遠慮は要らないのよ。加奈ちゃんの為と言うよりも私の為にも来てちょうだい」

と勧めるが、加奈は、なかなか首を縦には振ってくれなくて困ってしまう。

紀恵お婆ちゃんが、寂しさを感じているのは事実なのだが、加奈にしてみれば、親切で無理をして言ってくれているのであろうと思っているのだろう。

周囲のみんなも一緒になって勧めているのであるが、だめである。

これまで、立て続けに起こった辛い経験が、彼女の心をかたくなに凍らせてしまっているのであろうか。

結局、夕食の時は説得に応じず、明日の朝ごはんも一緒に食べようと約束をして部屋に戻った。

理絵は自分の父親も、自分がまだ小さい時分に死んでいるので、ここまで不幸の連鎖が起こると、悲しみや苦しみが深くなるのは、当然であり、分かる気がした。

そして、もう一度、加奈と話し合って、死のうと考え込むのだけは止めさせようと、説得してみようと思い、部屋を訪ねて、父親が死んだ時の出来事や二年前の歩き遍路をした時の心情などを話した。

加奈は、幾分落ち着きを取り戻していて、夕食時に話した前野のように、せっかく心身の逆境から立ち直ったのにもかかわらず、応援してくれた奥さんが死んでしまい、悔やんでいる人もいれば、理絵のように幼い時に父親が死んでしまい、父親の思い出が極端に少ない人もいる。