「金剛戦士Ⅱ」西方浄土

科学者は記者たちに、現在の彗星の位置や想定されている軌道などが描きこまれた太陽系全図や、速度などのデーターの数字が書き込まれている用紙を配り終えると、観測された事実のみを公表してゆく。

その後カメラ衛星の位置などの説明をして、今後の追跡観測の実施予定を伝えた。

数十分で発表を終えると、記者からは質問が相次ぎ、質問は李が科学者に問うた事と同じ様な内容であったが、記者の中には、無機物生命体である可能性を考えて、彗星を破壊する考えは無いのかと質問する者も居た。

科学者は、彗星を破壊するとかの問題は、自分たちが決めたり提案したりする問題では無いので意見をコメントできる立場にはないが、少なくとも現在、そのような話は出ておらず、地球に衝突する危険性があるならまだしも、地球の近くを通過するだけであり、地球には何らの影響も無いと思われる彗星を、破壊するなどということは考えられない。

もちろん無機物生命体である可能性など観測結果からは、全く得られていないのでコメントのしようが無いと述べた。

もし無機物生命体だったら、どうするのかと質問する記者も居るが、科学者は、そのような仮定の質問は科学者としては、答えようが無いと言って相手にしなかった。

科学者たちの述べる言葉は終始一貫、現在の彗星の状況についての事実を説明するだけであり、記者たちが、何らかの憶測を生むような話は皆無であった。

また科学者たちの態度も、多くは無機物生命体の可能性を感じている様子は無く、記者からの質問も次第に出なくなり、三時過ぎには会見発表を終了した。