【決意ー3】


小川が青ざめるワケは
一つ。


ヤツの体のことである。


それは、
いくら相手が遠くにいて
視界の悪い吹雪の中でも
銃弾は当たるはず。


なぜなら
小川の腕は
プロ以上であり、

標的さえ見えれば
必ず打ち抜ける
技量の持ち主だからだ。


しかし、
それほど小川は銃の腕が
確かなのにも関わらず、
雪男には銃が効いて
いなかった。


それが、
緊張して
弾が外れただけなら
問題はないが、

もし
あの弾が当たって

いたら、
大問題である。


なぜ弾が当たると
大問題かと言うと、
弾が当たっても
雪男は小川の方を
振り向きはせず、
平気で歩いて去ったのだ


つまり
それは不死の人間だと
いうことを、
示しているのでは
ないのだろうか?


もし
また誰かが襲われた時、
銃が効かなかったら…


そう思うと、
小川が
青ざめてしまうのは
仕方がない。


そんなことをよそに
話し合いは
行われていた。


「では川上さん。

荻原さんは
あなたのとこに行き、
家に戻るよう
説得していたのは
何分程ですかな?」


川上は
必死に思い出す様子だ。


「確か
10分か15分ほど
だったわ…」


となると
川上のいた小屋から
荻原が離れる頃に、
小川がこの家を出たと
考えられよう。


そして荻原は
雪男に襲われ、
小川が丁度その現場に
出会い、
雪男に発砲した
ことになる。


「川上さんにも
銃声は聞こえました
かな?」


「私には
聞こえていないわ……

ただ小屋から
外の様子を見た時、
人影があったから
見に行くと、
刑事さん達がいたのよ…」


川上は
先程から元気がない。


それは
自分の説得のために
荻原が
小屋まで一人で来て、

その帰りに
雪男に殺された。


自分が
殺したわけでもないが、
自分のせいで
荻原が殺されてしまった


それは
もはや自分が殺したのと
同じ意味だと感じ、

一人責任を
感じているのだ