【雪男ー12】


外は相変わらずの吹雪で

よく見ないと
トイレのある小屋など
あるとは分からない
くらいである。




「さっさと行くか」




と白井は歩き出し
田崎も後に続く。




だが、
目の前にある小屋まで
なかなか辿り着けない。




雪が深すぎて、
どうしても
足がとられるのである。




風も強く突風が吹く。




「う!スゲえ風!」




と白井は大声を上げる。




「やれやれ、
お前の言う通り
ワシは雪山を
なめていたようだな」




「ん?なんだって!?」




風の音が強い為、
田崎の声が白井には
聞こえなかった。




「今は待て!
話は後だ!!」




白井はそう言うと
また一歩一歩ゆっくり
歩き出す。




小屋まではそれほど
距離もなく、

普通に歩いても
10秒もあれば
着く距離なのだが、
実際小屋に着いたのは
数分かかった後であった




こんな短い距離を
やっとの思いで
着いてホッとする。




「ふう、やっと着いた」




と言い
白井は雪を払いながら
トイレに入って行った。




このトイレは
小さな小屋の外に
取り付けられているので

当然田崎は
この寒い吹雪の中で
待たされているのである




頭に雪が積もり、
張り込みをしている
かのようだ。




しばらくしても
出てこないので、

「白井のヤツ遅いな…

そういえば前に
トイレの窓から
逃げた犯人がいたな」




と田崎は呟き
警戒したが、

この吹雪の中
服を脱いで
逃げ出すわけもないし、

第一このトイレには
窓がなかった。




遅いと感じるのは
こんな寒い中
待たされているからで
ある。




頭に積もるこの雪は、
本当に昔を思い出す。




そうしているうちに
白井が出てきた