【存在せぬものー11】


「おかえりなさい。
どうでした?」




と大久保が
迎え入れてくれた。



小川も隣で
結果を心待ちにして
いるように、

こちらを見ている。


それより
白井の姿が
見当たらない……

…と思ったら
壁際に面して
横になっている。




とりあえずは
こちらも
何事もなかったよう
なので、

田崎は安心して
床に座った。




「側にいるのはいいが、
やはり下山するのは
頑なに拒まれましてな…

…喉が渇いたと
言ったので、

お茶を取りに
戻って来たのだよ。

だからほれ白井よ、
寝とらんでお茶沸かせい」




「あ、そのくらいは
私がやりますよ」




大久保は台所に行き
お湯を沸かし始めた。


と言っても
先程沸かした
残り湯なので、

すぐに沸くことが
できた。




「では、
次は私の番ですね」




ペットボトルに
お茶を詰めた
大久保が言った。




「任せましたぞ
大久保さん」




田崎はもう
お手上げ状態である。




やはり仲間を通して
説得した方が
良いのかもしれない。




「では行って来ますね。

ノック三回で
よろしいですよね?」




「それで結構ですよ。

行く途中
気をつけてくださいよ」




「はい、
では行ってきます」




そう言い
大久保は外に出て行った




それと同時に
小川が話しかけてきた。




「俺の事は
何か言っていなかったか?」




「いや、
小川さんも他の人も
話に出てきません
でしたよ。

ワシの仕事に興味を持ち
質問されたくらいですぞ」




「そうか……」




「きっと
理解してくれますよ」




と慰めの言葉をかけた。




そう言いながらも
田崎は台所に行き、
コップに
お湯を入れていた。




それを
ゆっくりと飲みながら
考え込んだ