【ワンコー13】


その問いに、
看護婦は「生きる」
と言うことを、
朋樹に話し始めた。






「…私も長く医療に
携わってるけど、
こういう仕事をしてると
生命の生きる大切さを
知ることができるの」







生きる大切さ……







忘れかけていた何かが
心のどこかを通り抜ける








「…どんなことを
知ったんです?」








生きることに絶望してる
今の朋樹は、
その大切さなど
分かることもない。







看護婦はゆっくり近付き
ワンコにそっと触れた。








「どんな小さな命でも、
その生きた証を
象徴する為に、
強く生きることが
大切なの。

だからワンコは
いつだって元気
だったのよ」







…………








そうだ…

そうだった…







ワンコは
いつでも元気だった…







こんな小さな命でも、
しっかりと
自分の死を受け止め
元気だった…









いつでも……








決して逃げずに……