【ワンコー10】


それでもワンコは元気で
自分の存在を示すように
大声を出している。






「ワン!!ワン!!」






その「生きる強さ」を
朋樹は観察している
ようだ。







「…どうしてお前は
そんなに元気なんだ…?

自分の命が近いのを
分かってるのに…」






たとえ、
「死」が近付いていると
しても、
それに負けるワケでも
ないかのように
ワンコは強く立ち向かう




それが少し
勇ましく見える。








死の恐怖や、
それに伴う悲しみに溺れ
絶望の中終われば、
その人の人生は
それで終わりである。







最期でも、
いや、最期だからこそ
自分がどう生きたか
精一杯生きることが
大切である。







「…じゃあ俺そろそろ
戻るよ。
またな」







「ワン!」







そう言って朋樹は去るが
分かっていた。


これが最後に聞く
ワンコの声と
いうことを…







朋樹が
いつもワンコに言う
「また明日な」と言う
言葉ではなく、
「またな」と言うセリフ







もう
この世では会えぬことを
直感づいた言葉である