【ワンコー2】


そう言えば、
入院して半年以上経つが
この病院のことは
よく知らなかった。






少し歩けば
知らない通路ばかり。



本当に
ここに半年もいたのかと
思うくらいである。







まあ、
関与するのも疲れるし

何事にも興味がない。





もう死ぬことしか
考えてない自分なので、
こうして歩いているのも
ただの気紛れであった。







その気紛れな足は
気の向くままに進み、
特に意識せずに
中庭へと向かった。






1人になるには
ちょうどいい。






病院内は人がたくさんで
ウザったく思える。






どいつもこいつも

幸せ面…







いい気なものだ…







日に日に
心が荒んでゆく…


こんな姿、
千里に見られたら
どうだろう?







きっとガックシするだろ……

…いや…
もう、死ぬ自分には
関係ないことだ。







もう…
何もかもが…







「ワン!」







突然の声に
朋樹はビクっと反応した







犬の鳴き声…?