【秋の木枯らしー17】


―――ガラ!!






それは
突然のことだった。






勢いよく開かれた朋樹の
病室に、
1人の女の子が
飛び込んだ。







「朋樹!!」








それを見た朋樹は、
目を丸くした。







「千……里…?」







ベットに近付いた千里は
強く朋樹を抱きしめた。







「……もう大丈夫…
私はここに居るよ。
ずっとずっと
朋樹の側に居るよ。
もう、離れないよ朋樹」







突然のことだが、
もう、どうでもいい。





溢れる涙で
今まで辛かった
自分の気持ちが、
一気に爆発した。







「千里…!!
千里……!!!」







大泣きで
ギュッと強く抱き締める
朋樹。






だが、次の瞬間……









…パチクリ









何故か真っ白のタイルが
目に飛び込んだ…







いや…これは…



天井…?







目を見開き、
ゆっくりと起き上がる
朋樹。






改めて周りを見渡し
確認した。







そして、
先ほどの幸せが
すぐに夢であることに
気付いた。







「なんだ……夢か……

そうだよな……」







幸せな出来事は

全て
頭の中で作り上げられた
偽りの世界。







現実は……変わらない







「うっ…うっ……」






大粒の涙が
朋樹の手の上にポタポタ
落ちている…






悲しい…

悲しい…






自分の幸せは
まるで砂のよう…

すくってもすくっても
手の中からこぼれ落ちる






その想いが、
いつまでも朋樹の涙を
枯らすことはなかった