【アナタを想う為にー1】


家に帰ると、
両親は暖かく
迎えてくれた。







「朋樹!お帰り!
さあ、ご飯食べましょ!
今日はアナタの大好物の
ハンバーグよ」







普段そんなこと
言わない…


こんなワザとらしい
セリフ、
ドラマでしか
聞いたことない。







テーブルには
たくさんのご馳走が
並べられている。






祝い事でもないのに…







楽しく会話をし、
食事をするものの、
両親の泣き出しそうな顔






楽しい会話と裏腹の顔


そんな空気に朋樹は
耐えられなかった。







「ご馳走様…」







そう言って部屋に
戻ろうとすると、
母は言った。







「今日ね、
朋樹の会社に
連絡しといたわ。
そう言うことだからって
言っといたから」







「え……?」







そう言うことだから
って…







「それは
会社には行かないって
意味?
せっかく就職決まった
のに?
母さんも喜んでた
じゃん」







………







うつむく両親。




その様子を見てハッとし

会社に行かないと言う
意味を
今、理解した。







自分の寿命は一年。






そりゃ会社も
必要としないし
行く意味もない…







それを理解し、
とりあえず自然に
返事をし直した。







「ああ……分かった。
じゃあ、二階行くから」







そう言い、
階段を上って自分の
部屋に行く。







だんだんと、
実感が涌いてきた。







自分の状況…



自分の死を……