【幻ー3】


どういうこと…?







あの時、
この部屋に来たのは
神谷ではない…?







この入院証…







グッとそれを握ると、
千里はアパートを
飛び出した。






走りながら千里は
考える。







あの時、
夢みたいな幸な日々
だったのに何故?







別れのワケ
今もまだ
本当は分からないの…








君の首に腕を回して
肩のくぼみに顔を
うずめて


ピッタリだよ、
離れられないよって
泣いて困らせたあの日…







微かに見た、
君の肩が
震えていたこと…






懸命に走りながらも
朋樹を思い出す千里。






そして、
向かった先は近くの
大きな病院。






前にインフルエンザで
世話になった病院だ。







「あの……スミマセン。
この入院証
ここのですか?」







そう受付に聞くも





「さあ……
ここのじゃないみたい
ですね…
別の病院と思われます」






まだ場所が特定できない
ので、
千里は
他の人にも聞いていた。





だが…






「さあ…分からないわ…」







「ごめんなさい。
見たことないわ」







「ここのじゃなければ
ちょっと…」







…と
誰も分からないようだ。






「ハア…」







疲れて入院証を眺める
千里。







すると……







「お……キミは…」






そう聞こえ振り返ると…







この人は…確か…



あ、
あの時インフルエンザで
世話になった医者だ