【幻ー1】


季節は過ぎ……






寒さが身にしみる
秋の季節が
またやってきた。







「……」







一室のアパートで
千里と神谷は
黙っていた。







重苦しい雰囲気…

いつもと違うように
思える。







「まあ…
仕方ないことだな。

短い間だけど、
千里と付き合えて
楽しかったよ」







どうやら別れの話を
しているようだ。







別にどちらから
別れを告げたワケでは
ない。







このままじゃ、
お互い成長できないと
いうことで
別れを決めたようだ。








「今までありがとね」







「ああ、千里もな」






悲しむことはない。
お互い気持ちがそこまで
冷めているのだから。





それなら気にせず、
安心して離れられよう。







「そんじゃあ行くよ。
こんなもんかな?」






荷物を整理した神谷は
辺りをキョロキョロと
見回す。







「あ、これも忘れてるよ」






千里がそう言って
ポンと差し出した
一つのブレスレット。








それを見た神谷は…