団地を出てからの生活。 知り合いに無理矢理入れられた軽音部で出会った 音楽と、人。 ――そして。 「バンドで歌うようになってから―おかしなヤツに、会った」 そう言った時のトキの表情は、穏やかで、幸せに満ち溢れていて。 もうそれが誰のことかなんて、トキの表情から何となく分かってしまった俺は、胸の奥が痛くなるだけだった。 それなのに、 「どんなヤツなんだ」 なんて、自分の傷を広げるようなことをして。 自分でも笑えるけど、でも何でだろう、何となく。コイツが知る伊上を、知りたいと思ったんだ。