「屈辱。…屈辱だわ」

「なにがだよ」

「馬…佐伯琢磨と廊下に並んでいるという、この状況がよ」

「お前いま俺のこと馬鹿だと呼びそうになっただろ」

「…」

「ちょっとは否定しろよ!」

うるさいわね、と心のなかで悪態をつく。

なんだってこいつはギャーギャーといつもうるさいんだろうか。そう…中学のときも、授業中発言するわりにほとんどが的を得ないもので、はたから見ていて苛々していた。
こんな頭の弱い男と。なんで、私が。

「…中学、高校と、一緒なのよ」

「それは俺もいいてえぞ、清水」

ああ……うるさい。
片足で、佐伯の膝にけりをいれる。ほんの少しうめいた佐伯が私を睨んだとき、真横にある職員室のドアが開いた。

「お、来てたのか。入れ」

無精ひげの生えた担任の顔を間近に見て、なんだか余計にげんなりとした。