「おいネズミ。
てめえいい加減にしろ。
だいたい何で
お前がここにいるんだ?」
不機嫌極まりない
チェシャ猫がこちらを
睨みながら問う。
「ああ…
帽子屋が、そろそろ
薔薇が色付いたから…
取ってきてって…。」
そういうネズちゃんは
嫌そうな表情で
大袈裟にため息をつき
ひらめいたように
こちらを見た。
「ねえアリス!!
僕を薔薇の広間に
連れて行っ「駄目だ!!」」
珍しく大声を出す
チェシャ猫に驚く。
が、すぐにチェシャ猫は
普段通りに繕い、
「アリスを巻き込むな…
眠りネズミ。
いい加減にしないと
八つ裂きにするぞ…?」
冗談、ではない。
目が本気だ。
しかしそんなチェシャ猫に
臆することもなく
ネズちゃんはクスリと笑う。
「猫は本当に馬鹿。
アリスが可哀想…。
アリスに隠し事ばっかり
しているくせに。」
あーあ、と大袈裟に
ため息を漏らし、
チェシャ猫をギロリと睨む。
なにやら険悪な雰囲気?
「隠し事じゃない。
不必要な情報を
与えていないだけだ。」
不必要な情報?
「ふーん。
でもそれって
猫の独断でしょ?
アリスは
知りたいことかも
知れないのにさ。
猫はいっつも
自分の都合で……。」
ピタリ、と言葉を閉ざす。
目の前には青ざめた
ネズちゃんの姿。
そして
ネズちゃんの
視線の先には
閃光を放ち佇む
チェシャ猫の姿があった。

