─ Alice ?─




「言いたくない…言いたくない!!」


駆け出した。チェシャ猫から逃げたくなった。



大好きなチェシャ猫。チェシャ猫さえいれば何もいらない。


そう、思いながら過ごしてきた。


けれど浮かび上がる疑問点


不信感が拭えないの





「違う…違うわこんなのっ…こんな……こんなの私は望んでいないっ………!!」



走った。ただただ走った。



「待てっ…アリスっ…──!!」





追いかけてくるチェシャ猫をどうにか撒こうと、枯れ果てた薔薇のトンネルに入り込んだ。



きっと以前は美しかったであろう薔薇たちのトンネル。


今は茶色く枯れ果て、ただ不気味に風に揺らめく。





「……ここならチェシャ猫にもバレないかも…。」


蔓たちに紛れ、チェシャ猫が通り過ぎるのを待った。


「アリス…俺のっ…俺だけのアリス──」






ザッ ザッ ザッ ザッ






足音は遠退き、チェシャ猫の姿は見えなくなっていった。


「ありがとう薔薇さん。今日は薔薇さんに助けられる日ね。」



枯れ果てた薔薇を撫でると、茶色い花びらは一枚、また一枚と散る。


散っていくのに





「あ、れ……なんで…」


枯れた薔薇は散り、真っ赤な薔薇が咲き出す。


待っていたよ、というように、周りの薔薇たちも散りだし、そして新たに真っ赤で美しい薔薇が咲き乱れ始めた。


「えっ…なんで、枯れていたのに…ど、うして…」




茶色く不気味な薔薇のトンネルは、みるみるうちに赤く美しい薔薇のトンネルへと変貌していった。