「アリス。そろそろ戻ろう。」
「…どこに戻るの?」
「俺たちのいるべき場所へ。」
「…私たちはどこにいるべきなの?」
「此処ではない。」
「じゃあどこなの?秋桜畑?」
「どうだろうな。」
「何よそれ。曖昧ね。」
「此処は…駄目だ。俺とアリスの世界じゃない。」
「…どういうこと?」
「それは俺よりもアリスの方が分かっているんじゃないか?」
「…何が言いたいの?」
「…誰と話していたんだ?アリス。俺に嘘をつくな。」
「別に…ただ、お花が綺麗だったから…話しかけてただけよ。」
「随分とお喋りな花だな。」
「嘘じゃないわ。本当に…今はお花になってしまったから。」
しまった。
そう思ったときには手遅れだった。
「花になった…?元は…なんだったんだ?アリス。」
言いたくない。話したくない。
話したら
話したら
また、消されてしまう。
また…?
何を、消されてしまうの?
私、わたし
チェシャ猫に 何を 消された?
私はチェシャ猫といた。
なのに頭に浮かぶ知らない人たち
顔 声 名前
この記憶は いつ どこの記憶なの

