「…どこ行ってたんだ?」
不機嫌そうに、問いかけてくる姿はまるでヤキモチを焼いているようだった。
「ちょっとお散歩してただけ。」
薔薇のことには一切触れなかった。
私だけの、私と双子だけの秘密にしておきたくて。
フ ゙ワ ッ
急に吹き付けた風に体が揺らぐ。
「…アリスは────だな。」
「え?ごめっ…聞こえな…」
風が会話の邪魔をする。
『 聞くな 。』と耳を塞ぐように、風が吹き付ける。
「ひやぁっ…! チェシャ猫っ…」
「 ───。──、…──。」
チェシャ猫の姿が揺らぐ。
風で目が開けられない。声も聞こえない。
このまま、チェシャ猫が消えてしまう気さえした。
「アリス。大丈夫か?」
目を開くとチェシャ猫がいた。
何も変わらない 普段のチェシャ猫。
「…大丈夫。大丈夫よ。」
さっき何を言ったのか
そんなことすっかり忘れていた。

