チェシャ猫は目で蝶を追う。
尻尾は自然にゆらゆらと揺れだし、今にも飛びかかりそう。
「……暫くかかりそうね。」
少し散歩をしよう。そう思い、何もない森を歩き出す。
湖から少し進むと、草や花が少しだけ生えていた。
生きようとしている草花は、とても生命力があって
少し、羨ましかった。
「……あれ?こんな所に、薔薇…?」
何故か、一輪だけ淡い薄紅色の薔薇が咲いていた。
とても儚げで、なのに生命力が溢れていて、何故か、何故だか分からないけれど
胸が、痛かった。
蔓が根を張り巡らせ、一カ所だけ異空間だった。
「………………忘れ……でよ。」
突如耳に響く幼い少年の声。
知らない声のはずなのに、胸が騒ぎ出す。
頭が、情報を探し出す。
「……忘れ……しな…でよ。」
「……ら……リス…。」
次第に声は、ハッキリと私の耳に、頭に、記憶に入り込む。
忘れたりしないでよ。
僕らの ア リ ス 。

