それからチェシャ猫とは一切会話をしなかった。
チェシャ猫は何も言わず前を歩いていて
私はついて行くのがやっとだったから。
秋桜畑をあとにして、何にもない森に辿り着いた。
本当に何にも無い、焼き枯れた森。
少し進むと、綺麗な湖があって
そこでやっとチェシャ猫が口を開いた。
「アリス、少し休もう。」
湖の畔には少しだけ緑があって、白い小さな花が風に揺らぐ。
蝶はヒラヒラと華麗に舞いながら、私とチェシャ猫の視線を奪っていた。
「…やっぱり猫なのね。」
「今頃何言ってんだよ。」
またたわいのない会話をして、穏やかな時は流れていった。」
蝶は ヒラヒラと舞い続ける。
湖の畔で 全てを見透かしたように 優雅に 魅惑的に。

