聞き慣れた声に体が反応し、恐る恐る振り向くと、紫の見慣れたシルエット。
「……ちぇしゃねこぉ……!!!」
安堵の涙が込み上げ、チェシャ猫にしがみつく。
「何だよ。急に…なんかあったのか?」
「秋桜…っ…血がっ血が…真っ赤で…止まらなくてっ私…私……っ」
伝えたいのに、気が動転し言葉に詰まる。
「落ち着けアリス。何があったんだ?」
深く、深呼吸。
今起きたことを一つ一つ、述べる。
話終わり、恐る恐るチェシャ猫の顔を覗くと、顔色一つ変えずに私を見つめていた。
「あのっ…聞いてる?」
どうして動揺しないの?
どうして冷静にしていられるの?
聞きたいことは山々だった。
「アリス。何言ってるんだ?」
何も不思議なことなんて無いだろう、と言われたようだった。
「なっ…何って…秋桜から血がっ「それは聞いた。でも血なんて一滴も落ちてない。」」
そんなはずはない。
たしかに私の掌は血塗れで、ドレスには赤いしみが
赤い 血の跡が
「あ、れ……ない?」
ドレスには泥一つ付いていなかった。掌にも何にもない。
「アリス…少しはしゃぎすぎたんじゃないか?きっと疲れてるんだ。少し、休もう。」
そんなはずはないのに
証拠が何一つ残っていなかった。

