チェシャ猫が笑う。
『 アリス 』と愛しそうに私を呼ぶ。
後ろを振り返れば真っ赤な海が波音をたてていた。
白と黒の柱はゆらゆらと揺れ、道が波で歪み始めていた。
「さあ、アリス。俺とお前だけの世界を――」
チェシャ猫は手を差し伸べ、優しく笑った。
導かれるように、私は手を握った。
チェシャ猫の手はとても冷たくって
一瞬、鳥肌が立った。
「商談成立…だな。流石、俺のアリス。素直で優しくて…
愚か者だ。」
崩れる音がした。
白い柱は崩れ落ちる。
私と、あの国を繋ぐ唯一の道が閉ざされる。
何も覚えていないのに
どうしてこんなに寂しいの
大好きなチェシャ猫といれるのに
どうして、どうして
怖くて堪らないの。

