─ Alice ?─




何を言っているの?



チェシャ猫の言葉が理解出来なかった。




「壊す…?壊すって、チェシャ猫…何、言って…っ」



「アリスこそ何動揺してんだよ。だって、この世界にもう用なんて無いだろう?

アリスはこの世界で誰に出逢い、誰と共に何をしてきたんだ?


この世界で誰か大切なモノでも見つけたのか?」




言葉に詰まった。



私、この世界で、誰に出逢った?


この世界で誰と会話をして、何をしていた?




あれ、私ここまでどうやって来たんだった?




後ろを振り向くと、赤い海は波音をたてていた。



海の上には黒い柱と白い柱が浮かんでいて


うっすらと道があるのが見える。




私、どっちを通って来たんだろう。



何にも、思い出せない。




「なあアリス。この世界に未練なんて、無いよな?」




この世界。


あれ、ここって、何ていう国だった?





たしか、えーっと…







「 ア リ ス と 俺 だ け の 国 を 創 ろ う ? 」





そう、だよ。
未練なんてあるはずないじゃない。



だって、名前すら分からないじゃない。



だけど、何でかな?







胸が、凄く苦しい。