「私っ…私は…!違うのっ!
キング違うのよ。
私はこの国にいたいの…この狂った世界を救いたい…ビルさんから話を聞いたの。
私のせいでこの国の秩序は乱れてしまったって…だから、私、わたしっ…」
自然と涙が零れ落ちていった。
「もう遅い。鐘は鳴った。お前はチェシャ猫を選んでしまった…――」
ゴーン ゴーン
ゴーン ゴーン
「森が騒がしい…そろそろ住人たちが城の前に集まり出すだろう。
この鐘が鳴り止む前に、この国を出ろ。
俺はお前を守りきれる自信が無い。」
キングの瞳は悲しげだった。
「さあ急げ。森は危険だ。
裏の薔薇園を通り、
薔薇のトンネルを抜け、
赤い海を渡るがいい。
その先にお前の選んだ奴がいるだろう。」
私の背中を強く押し、急げと急かす。
キングに会えるのもこれで最後なのだろうか…――
門の向こう側には少しずつ住人たちが集まり始めていた。

